以前、コーヒーの味の表現に使う「コク」という言葉が分かりずらい、という話を記事にしました。
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しかし、そもそもコクという言葉の意味も調べていないのに、よく分からない、なんて言ってしまっていたことに気づきました。
反省、、
ということで、コク、という言葉について調べるため図書館へ。
言葉を調べるならやはり辞書でしょうか。

図書館にあった各辞書の説明はこんな感じ。
岩波国語辞典第八版
味わえば味わうほど心にしみるような、すぐれた趣、味。
本来は酒などの味覚について使う語。「酷」からとも「濃く」からともいう。
旺文社国語辞典第十版
深みのある味わい。
広辞苑第七版
(本来、中国で穀物の熟したことをあらわしたところから)酒などの深みのある濃い味わい。
私なりにまとめてみると、
①コクを漢字で書くと「酷(この字を使うというのが意外!)」もしくは「濃く」。
②もともとは酒の味に対する表現。広辞苑の説明に従うなら、熟成による味わいを言い表しているよう。
③深みがある、味が濃い、ネガティブな味わいではない、という条件を満たしたものがコクがある、と表現される。
こんなところでしょうか。
正直なところ、深み、と表現される味わいがイマイチ分かりませんが、いったん置いておくことにします。
さて、ここからは私なりの考えです。

本来の意味から考えるに、もともとのコクが意味するのは熟成によって生じた香りや舌触りといった感覚、複雑な味わいのことを指すようです。
つまり、例えばカレーの味見をして「味は濃いんだけどコクが足りないんだよね~」なんて言うのは少しずれた表現になってしまう、ということです。
「味は濃いんだけどコクは感じられないんだよね~」もしくは「味の濃さの割には深みがないんだよね~」というほうが正しいと思います。
ただし、カレーを作ってあげたパートナーや親しい相手にこんなこと言われたらイラつきますが、、
今、カレーを例に挙げましたが、そのほか、シチューなどでコクという表現を使うことが多いと思います。
よく考えるとカレーやシチューもコクを生み出す3つの要素「深みがある・味が濃い・ネガティブな味わいではない」を満たしています。
一方、熟成という要素はどうでしょうか。
カレーやシチューのベースとなるスープを作るうえで野菜などを煮込んで旨味を抽出しています。
確かに旨味を凝縮していますが、熟成とは違うように思います。
そこで考えたのが、2日目のカレー。
1日置いたほうがおいしい、とよく言いますが、おそらくこれが熟成にあたるのではないでしょうか。
つまり、作り立てのカレーに対してコク云々いうのはそもそも無理がある、ということです。
出来立てカレーの味見をした際は、間違っても「コクがない」なんてないものねだりはしないように。
では、本題。
コーヒーに対してコクという表現は当てはまるのでしょうか。
まず、コーヒーの深み、複雑な味わい、という部分は焙煎によって生み出せると考えます。
コーヒー豆は焙煎させることで苦みや酸味が形成されていきます。
もともとコーヒー豆には酸味のもととなる成分が多いのですが、焙煎によって化学変化が起き、酸味のもととなる成分が苦みのもととなる成分に変改していきます。
焙煎度合いによって豆の味わいが変化するのはこのためです。
もちろん酸味の成分が一気に苦みに変わるわけではないので、ちょうどよい焙煎度合いならこれらをバランスよく取り入れることが可能です。
また、酸味、苦み、と一口に言ってもその中身も様々。
この幅広い味わいを焙煎で出すことでコーヒーの深み、複雑さが現れるのではないでしょうか。
次に、コーヒーの濃さやネガティブでない味わい。
これは抽出方法がポイントになりそうです。
しっかりと濃度を出しながら、過抽出によるえぐみを抑えることで、美味しい成分だけをしっかり出すことができます。
では、熟成の要素はどうでしょう?
豆を乾燥させる過程がここにあたると思います。
コーヒー豆はコーヒーチェリーという果実の種。
そのため一度実を取り除き、豆を乾燥させる作業があります。
この乾燥の方法は大きく分けてウォッシュドとナチュラルという手法に分かれています。
ウォッシュドは果肉を完全に取り除き、水洗いしたのち乾燥させます。
一方、ナチュラルは果肉がついたまま乾燥させます。
一般に、ナチュラルのほうが芳醇な味わい、ウォッシュドはクリーンな味わい、という傾向があります。
乾燥中、果実に残った水分により豆の発酵が起こるそうで、この発酵具合の差が味わいに現れるそうです。
この発酵による味わいの変化を活用するため、ちょっとだけ果肉を残すハニープロセス(パルプトナチュラルなどいろいろな呼び方があります)という手法や、乾燥を行うときに微生物を加えて意図的に発酵を促す手法などが編み出されているそうです。
つまり、コーヒー豆を乾燥させる時点で、コクのベースになる味わいが醸成されていると考えられます。
しかし、コーヒー豆の熟成は液体にする前のもの。
お酒のように、既に成分を抽出した液体を熟成させたものとは異なります。
本当に同じ熟成といっていいのかは疑問が残ります。
ここまでをまとめると、一部検討の余地はありますが、コクを構成する要素をコーヒーが持っていると言えそうです。
考察内容から、コクがあるコーヒーとは、ナチュラルで熟成された豆を様々な味わいがバランスよく含まれるよう焙煎し、濃く抽出したものを指す、というのが結論になります。
今回は辞書の意味からコクについて考察してみました。
もちろん、辞書だけでは普段使う言葉の細かいニュアンスまで拾うことができないので、実際に想像するコクと少しずれているかもしれません。
また、今回は熟成とは何か、深みのある味とは何か、ということまで深堀しておらず、私の感覚で解釈している個所も多々あります。
異論・反論は大歓迎です。